それから、どれくらいそうしていたのかはわからない。
「だからぁ、行かないって言ってるじゃん」
「いいじゃん、カラオケ行こうぜ! 俺、超歌うまいから聴いてよ」
「結構です。ナンパなら他でやってよ、あたし、人と待ち合わせしてるんで」
そっと目を開いて声のするほうを振り返った。数メートル先で迷惑そうにしっしっとナンパ男をあしらう女の子の姿が目に入る。
女の子の隣には、ヘラヘラ笑う派手な金髪の男がいた。あの制服はこの辺でガラの悪い男子校のものだ。
あそこの生徒は不良が多くて、よく警察沙汰になるような問題ばかり起こしていると噂に聞いている。
カツアゲや恐喝、喧嘩なんて日常茶飯事で、正直怖い以外のなにものでもない。
「誰と待ち合わせてんの? さっきから全然誰もこないじゃん」
「あなたには関係ないでしょ? ついてこないでくれる?」
「気が強いねぇ、きみは。そんな女の子、嫌いじゃないよ」
「あたしはあなたみたいな人は嫌いです」
うわぁ、はっきり言うなぁ……。
か弱そうに見えるのに、なんでもズバズバ言う気が強い女の子。背が高くて、かわいらしい容姿。
制服のスカートから伸びる足がきれいで、まるでモデルのよう。
チラチラ見ていると、女の子と目が合った。その目が助けてほしいと言っているのがわかった。
ど、どうしよう……。
困ってる、よね。
あたしは思わず拳を握りしめる。
そして、勇気を振り絞って二人の前に立った。
「ご、ごめんね、お待たせ!」



