エレベーターに乗って、マンションの最上階から駅に直結している階まで降りる。

ガラス張りのそこからは宝石が散りばめられているような夜景が見えた。

「きれい……」

うっとりしながら頬が熱くなるのを感じた。お風呂上がりだからなのか身体中が火照る。

だけど身体が火照るのは、ただ単にお風呂上がりだからという理由だけじゃない。

マンションのエントランスには豪華なシャンデリアがキラキラと輝いていて、リノリウムの床はスニーカーで歩くとキュッキュッと音が鳴る。

二階に位置するそこは、駅と繋がっていて下は道路だ。あたしは歩道橋から遠くを見渡した。

「はぁ」

次々と流れては消えて行く車のヘッドライト。ざわざわと騒がしい喧騒。大型のトラックが走るたびに伝わってくる振動。

夜空には三日月が浮かんでいて、目を閉じ、そっと耳をすませてみる。

どこかでストリートライブでもやっているのだろう、よく通る歌声とアップテンポのギターの音が聴こえてきた。

すぐそこにある炭火の焼肉店からは、いい匂いがする。

あー、お腹空いたな。

そういえばなにも食べてないっけ。

それにしても、やっぱりここは落ち着くなぁ……。

お父さんとお母さん、今日は帰ってくるのが遅いって言ってたし、ゆっくりしよう。