「行こ、叶ちゃん」
「え、あ」
斎藤くんに引っ張られるようにして教室を出る。
「ちょっとー、今のなにー!?」
「なんでコジローくんが青野さんと?」
「意味わかんないんだけどっ!」
教室を出たところで、悲痛な女子の叫び声が聞こえた。
ど、どうなっているんだろう……。
「俺……なにやってんだ」
「え?」
「ムカついて、気づいたら身体が勝手に動いてた」
「……っ」
ねぇ、斎藤くん、それって……どういう意味で言ってるの。
ふと横顔を見るとその頬はほんのり赤い。
斎藤くんはあたしの視線に気づくと、照れくさそうに自分の頭をガシガシと掻いてからそっぽを向いた。
それがどういう意味なのかは、フリーズしそうになる頭ではわからない。
どうなっているんだろう……。
「それ、かして」
「え?」
「宮マンのジャージ」
「あ、はい」
「代わりにこれ、羽織ってて」
斎藤くんは自分が着ていたジャージを脱ぐと、あたしの肩にそっとかけてくれた。
「で、でも、ペンキがついちゃう……」
「べつにペンキぐらいどうってことないよ。それより、叶ちゃんが宮マンのジャージ着ることのほうが嫌だから」
──ドキッ
うう、そんなこと言われたら、クラクラしてどうにかなりそうだよ。
斎藤くんの体温がかすかに残るジャージの裾を、指先でギュッと握りしめた。



