「離せよ」

対応に困っていると、斎藤くんが間に入ってきた。

どことなく低いその声と、気に入らないことでもあったかのようなムッとした横顔。

斎藤くんは宮間くんの腕をつかんで、睨んでいる。

あたしは一瞬そんな斎藤くんにヒヤッとしてしまった。

「なんだよ、コジロー」

「俺が一緒に行くから、おまえは作業してろ」

「は? なんでだよ?」

「なんか文句でもあんのかよ?」

その声はいつもの穏やかな斎藤くんらしくない。宮間くんもそんな斎藤くんに息をのんだのがわかった。

「どうしちゃったんだよ、コジロー」

「そうだよ、おまえらしくないぞ」

「気軽に触られて黙ってられるか」

圧倒的な威圧感を放つ斎藤くんに、あたしまで固まってしまった。

周りの女子も驚いている様子。

「コジロー! それは問題発言だぞー! どういうことだよ」

「どうもこうもないっつーの。とりあえずおまえらうっさい」

ど、どうしよう、こんな時なのに、うれしくてドキドキしてきちゃった。

『離せ』

『気軽に触られて黙ってられるか』

もしかしたら、あたしの勘違いなのかもしれないけど……。

それって、ヤキモチ……?

いや、冷静になれ、あたし。

そんなわけないよ……。

浮かれちゃダメ。