う、ウソ……。
冗談でしょ?
「うっわー、これはヤバいわ」
「宮マン、なにやってんだよー」
や、やっぱり、ペンキなんだ……?
白いベストに黄色いペンキなんて……どう考えても目立つやつじゃん。
それに髪の毛にまで違和感を感じるから、きっとついちゃってるよね。
よりによって……ペンキだなんて。
うう……最悪だよ。
クリーニングに出せば落ちるのかな。いや、まずは水洗いしなきゃだよね。
白いベストは乾く前に脱いで、一度洗ったほうがいいかもしれない。
髪の毛も……どうしよう。カピカピになったら落とすのは大変だよね。
クラスメイトから浴びせられる痛いくらいの視線。
「青野さん、大丈夫?」
「バカ男子、なにやってんの!」
「あたしなら、切れるレベル」
「あれじゃ外歩けないよね、恥ずかしいー!」
心配してくれる人もいれば、クスクス笑っている人もいて、あたしは思わずうつむいてしまった。
「叶ちゃん……大丈夫? マジでこいつがバカでごめん」
斎藤くんはあたしのそばまできて、申し訳なさそうに眉を下げた。
斎藤くんのせいじゃないのに、まるで自分がやったかのように申し訳なさそうな顔をしている。
「う、ううん、斎藤くんのせいじゃないから」
「いやいや、俺らのせいだよ。ごめん。ほら、おまえらも全員謝る!」
「ごめんなさい」
「スライディング土下座!」
「すみません」
その場にいた全員に謝られて、なんだか逆にこっちのほうが申し訳なくなってしまった。
斎藤くんの周りの男子はみんなキラキラしていて、目立つ人ばかり。オーラが眩しすぎて、直視できない。
「クリーニング代出すんで……許してください」
張本人の宮間くんが、深々と頭を下げた。
背が高くてがっしり体型の宮間くんは、斎藤くんと同じバスケ部の男子で、スッキリとした顔立ちの爽やかイケメン。
「あ、えっと。こんなの全然大丈夫だよ」
本当はショックだけど、悪気があったわけじゃなさそうだし。
こんなに謝ってくれてるし、反省してくれてるし。
なにより注目されるのが恥ずかしいから、とにかく教室を出て洗い流しに行きたい。