好き勝手なことばっか言いやがって、おまえらに叶ちゃんのなにがわかるんだよ。
なんも知らねーくせに。
さすがにヤバいと思ったのか、ヤロー共は血相を変えて蜘蛛の子を散らすようにこの場から去って行く。
二度とそのツラを見せるんじゃねー!
次会ったら、容赦しねーからな。
「さ、斎藤くん? どうしたの?」
どうしたもこうしたもない。
っていうかさぁ、もうちょっと危機感持ってよ。
小暮の時も思ったけど、危機感がなさすぎて、無防備で、しっかりしてそうに見えて、抜けすぎなんだよ。
だからあいつらにもあんなふうに見られるんだ。
頼むから、そんなに色気を振りまかないで。
誰の目にも触れないように、とりあえずじっとしていてほしい。
「手、大丈夫? ケガしてない?」
さり気なく触れられた手に、ジンと熱がこもるのを感じる。
心配そうな表情を浮かべる叶ちゃん。
俺はそんな叶ちゃんの髪にそっと触れて、耳元に唇を寄せた。
身体をビクッと震わせて、固くなるウブな態度がかわいい。
あ、やべ、この香り。
不覚にもまたドキッとしてしまった。
「とりあえずさ、もうこの髪型禁止な」
「えっ……? な、なんで?」
「なんでも! 俺は下ろし髪のほうが好きだから」
「あ、そ、そうなんだ? 今日は暑かったから」
「うん、でも、もうダメ」
「わ、わかった」
やべ、つい、本気で言ってしまった。
なぜか冷静じゃいられなかったんだ。