でもそんな自分は認めたくなくて、なんでもないフリをした。

「やっべ、今日の青野さん、めちゃくちゃエロい」

「だよなぁ、俺も思った!」

「あの髪型、すっげーそそるよな」

廊下を歩いていると、たくさんの男たちの視線が叶ちゃんに向けられた。

当の本人はまるで気づいてなくて、俺はさり気なくヤロー共のいやらしい視線をシャットアウトするようにそばに立つ。

「あー、一度でいいから、あんな子と付き合ってみてーわ」

「わかるっ! エロいことしたい」

「ガード堅そうな感じだけど、意外とすごかったりして」

「はは、やべーそれ、最高じゃん!」

「案外遊んでるかもな。あの色気は、ビッチ臭がプンプンする」

──イラッ

思わず振り返ってそいつらを睨みつけた。

イライラして、爪が食いこむほど拳をキツく握りしめる。

「うわ、やべ、なんか睨まれた」

「斎藤じゃん、こっえー」

「つーか、なんであいつが睨んでくるわけ?」

「まさか、青野さんとできてるとか?」

「いやいや、それはやべー。色々と妄想がすぎるわ。ビッチ説がより濃厚に──」

──ガンッ

我慢できなくなって、廊下の窓をグーで思いっきり叩いた。

ジンジンして痛かったけど、イライラのほうがすごい。