もっと俺を、好きになれ。


「小次郎、朝だよ、起きてっ!」

「んー……もう、少し……」

「もうご飯できてる! お父さんも起きてるよ! 朝練がないからって、だらけないの!」

勢いよく布団をはぎ取ると、姉ちゃんは無理やり俺の腕を引っ張った。

寝ぼけ眼の俺を強引に立たせると、引っ張ってリビングに連れて行く。

「ほら、さっさと食べて。今日は早く出なきゃいけないから」

「うーん……ねみぃ」

「しゃきっとしなさい、しゃきっと」

「無理ぃ……」

「もう、お父さんもなんとか言ってやってよ」

それまで黙々とご飯を食べていた父親の目が俺に向いた。その瞬間、一気に目が覚め胸にヒヤッと冷たい風が吹く。

なんで、いるんだよ。

普段はもっと早く出るくせに。

どこにでもいるような大手企業のサラリーマン、部長という役職つき。四十代なかばにしては、中肉中背でスマートな体格。

世の中の恰幅がいい父親像とはちがって、紳士的という言葉がよく似合っている俺の父親。

「しっかりしなさい、小次郎」

おまえにだけは言われたくない、そんなこと。

テーブルの下できつく拳を握りしめる。まともに顔を見ることもせず、俺はそっぽを向いた。

早く出たいこんな家。同じ空気を吸うのも、顔を見るのも嫌だ。