もっと俺を、好きになれ。


「おかえり、小次郎。夕飯冷蔵庫の中に入ってるから、チンして食べてね」

俺の帰宅と反対に、バタバタと家を出て行こうとする五歳上の姉の小町(こまち)。

すれ違いざまにムワッとするような甘ったるい香水の匂いがした。

派手なメイクと巻き髪に、膝上丈の短いスカート。トップスは胸の谷間がチラ見えするゴージャスなスパンコールがあしらわれた黒いノースリーブ。

「もうちょっとマシな服装できないのかよ」

はっきり言って似合わない。派手なメイクも、巻き髪も、なにもかも。昔はそんなんじゃなかったのに、姉ちゃんはいつしか変わってしまった。

「なに言ってんの、失礼ね」

姉ちゃんは子どもみたいにムッと頬を膨らませる。俺よりも大人なのに、俺よりも子どもでどこか抜けている。

「もう少し隠せよ。男はそういうのに魅力感じねーんだからな」

「子どものあんたに大人の魅力なんてわからないでしょ。じゃあ遅れるからもう行くね」

姉ちゃんは笑顔で手を振り上機嫌で去って行く。

男ができたんだろう、ここ最近、夜になると毎日のように出かけている。

メイクも髪型も、服装だって、男の趣味なんだろう。昔はもっと地味だった。

その派手な恰好を見ていると、母親の姿とかぶってイライラしてくる。

やめろよ、あからさまに女をアピールするような恰好。

十歳の時に母親が男を作って出て行ってから、ずっと母親代わりをしてくれた姉ちゃん。

その姉ちゃんが母親みたいになりそうで、家族を捨てて出て行ってしまいそうで、怖い。