上辺だけの付き合いじゃ嫌なのは、あたしも同じ。
「これから知っていく。それじゃダメかな? 全部を知るには時間も必要だと思うし、すべてをさらけ出すには信頼関係も大切だよ。誰にだって知られたくないことや、見られたくない部分もあるだろうし。それはあたしも同じだから」
どうしても伝えたい想いがある。
「きっかけはたしかにすごい斎藤くんだったかもしれないけど、あたしは……弱ってる斎藤くんも、怒ってる斎藤くんも、余裕がない斎藤くんも、全部見てみたいと思ってる」
大切なきみに届けばいいと、心から願った。
だって斎藤くんは傷ついている、そう感じてしまったから──。
「あたしの斎藤くんへの気持ちは誰にも負けない。ホンモノだから」
さすがにここまで言うのも勇気がいるけど、斎藤くんにはここまで言わないと伝わらないような気がした。
こんなに真剣に誰かにぶつかるのは初めてかもしれない。でも、これがあたしの本音だよ。上辺だけじゃない付き合いがしたい。
斎藤くんの全部が知りたい。
だからさらけ出してよ、色んな顔を。
「ありがと……」
斎藤くんは小さくそうつぶやいてから、プイとあたしから顔を背けた。
ほんのり耳が赤いような気がするのは……気のせい?
「さ、斎藤くん?」
もしかして……怒ってる?
余計なこと、言いすぎた?
あたしは心配になって斎藤くんの顔を覗きこんだ。
「わー、だから見んなって。わざわざ反対向いたのに」
片手で目の部分を隠しながら、斎藤くんは真っ赤だった。キュッと唇を結んで、なにかを堪えている様子。
「俺、ダメだ……」
「え?」
「そんなこと言われたら……」
「ま、真っ赤だよ、斎藤くん……」
「うん、叶ちゃんがまっすぐすぎて……俺、ドキドキしすぎてヤバいかも」
「え……うっ」
「なんだか調子が狂うんだよ、叶ちゃんに真剣な気持ちをぶつけられると。はぁ、なんでだろ」
そう言いながら斎藤くんはパタパタと手で自分の顔を仰いだ。
照れた顔がなんとなく色っぽくて、今までに見たことがないくらいの男っぽさを感じる。
なんだろう、これは。ドキドキを通り越してギュンギュンする。
あたしのほうが、どうにかなってしまいそうだよ。