少しは近づけているのかな、だとしたらすごくうれしい。
いつかは……斎藤くんの特別な女の子になりたいよ。
「その辺ブラブラしようか」
ドーナツを食べ終えたあとは、斎藤くんの提案でショッピングモールの中をブラブラした。
斎藤くんはアクセサリーショップや女子が好きそうなお店の前で立ち止まってくれて「こういうの好き?」とあたしに聞いてくれる。
きっと斎藤くんなりに、あたしがどんな物に興味があるのかを知ろうとしてくれている。
それがうれしくて、あたしも同じようにショップの中を見て回った。
隣にいられることが幸せで、ずっと斎藤くんの隣で笑っていたいよ。
斎藤くんの持つ優しい雰囲気が好き。その笑顔が好き。
「斎藤くんって優しいよね」
「誰にでも優しい奴って、結局誰にも優しくないんだよ」
「え、なにそれ」
「昔、誰かにそうやって言われた」
誰かって……誰だろう。
「優しいよ……斎藤くんは。一年の時、あたしのこと助けてくれたの覚えてる?」
雑貨屋さんを見て回りながら斎藤くんに問う。
「んー、そんなことあったっけ?」
「クラスの子の財布が盗まれてあたしが疑われた時『憶測だけで人を疑うのはやめろよ』って助けてくれたんだよ」
「あー……! あったな、そういえば……」
なぜか斎藤くんはそう言って目を伏せた。
その横顔に影が宿ったのがわかって首をかしげる。
「どうしたの?」
「いや、うん、あれはさ……」
斎藤くんはそこまで言うと黙り込んでしまった。
難しい顔をして、なにかを考えているみたい。