「聞いたんだよ、周りにいた連中から。あの子たちも、どうせ俺のことなんて興味本位だろうしさ」

もしかして、迷惑だったかな……?

「でもあたし、どうしても許せなくて思わず……」

あたしは冗談でもあの子たちにあんなことを言ってほしくなかった。

ああ言われてるのを、黙って聞いていられなかったんだ。

「ああいうのには慣れてるからさ。後輩の女たちが叶ちゃんになにするかわかんないし、そっちのほうが心配」

そう言った斎藤くんはとても寂しそうな顔で笑った。

「あたしのことはいいんだよ、なにされたって。で、でも、あたしはちがうからね?」

「え?」

「斎藤くんのこと、真剣だから……!」

興味本位なんかじゃない。真剣なの。だから勘違いしてほしくない。信じてほしい。そんな思いで斎藤くんの目を見つめた。

「はは、うん。ありがと」

斎藤くんの目は細く優しく弧を描いた。

尋常じゃないくらいドキドキして、頬が熱くなる。

惚れた者負けってよく聞くけど、その通り。

そんな顔されちゃったら、もうなにも言えないよ。

「やべー……」

「え? なにが?」

「いや……なんも。それより帰ろうぜ」

斎藤くんはそう言ってあたしに背を向けると、出口へ向かって歩いて行く。

隣に並んでそっと見上げた横顔が、うっすら赤く染まっているような気がした。