大きくうんと頷くと、斎藤くんは満足そうにニッコリ笑って体育館に戻っていった。

あたしの姿が見えたからわざわざ追いかけて来てくれたなんて、すごくうれしい。

『ダメ』って言って飛び出して来てくれたことも、飛び上がるほどうれしかった。

恐る恐る昇降口に戻ったけどそこには人の気配がなくて、あたしはササッとローファーに履き替えて学校を出た。

付き合っていることはみんなにはヒミツ。

誰にも見られないように、斎藤くんは本屋さんを指定したんだろう。

学校から駅までは徒歩で十分の距離で、駅前はわりと賑わっているため学校帰りの高校生の姿がたくさんあった。

本屋さんに、ファミレスに、カラオケに、ゲームセンターに漫画喫茶。ひと通りの遊び場が揃っていることもあって、夜遅くまで若者が耐えない。

駅前の本屋さんに入ると、中からでもわかるように外が見える位置に立って、ファッション誌を手に取りパラパラとめくる。

『デート服特集』

いつもなら流し読みするだけのページだけど、ついつい食い入るように見つめる。

斎藤くんは女の子の服装とか、どんな感じが好きなんだろう。

スカート?

ジーンズ?

セクシー系?

かわいい系?

カジュアル系?

フェミニン系?

それとも、ガーリー系?

うむむむむむ、難しい。

「うっわ、これは大胆すぎー!」

あたしの手元を覗き込むように、誰かが背後からヒョイと顔を乗り出した。