さっきの低くて真剣な声はなんだったんだろう。
もういつもの斎藤くんに戻っていて、今さら聞き返すこともできない。
「もしかして、困ってなかった、とか?」
「いや、あの、それは」
「だから連絡先教えようとしてたわけ?」
「う……」
うっ、なんだか責められているような気がするのは気のせい?
それに、なんだかスネてる?
いや、まさかね。
おどおどしていると、斎藤くんは急にプッと噴き出した。
「はは、冗談だって」
冗談……。
「なんとなくしつこそうな奴だったし、連絡先教えたらややこしいことになりそうだったから、止めたんだよ」
「え……あ」
そう、だったんだ……。
なんで軽くショック受けてるの、あたし。
「そういえば斎藤くん、部活中だったんじゃないの?」
「叶ちゃんが出てく姿が見えたから、追いかけたんだ。もう終わるから、一緒に帰る?」
「う、うん!」
「はは、即答かよ。じゃあ駅前の本屋さんで待ってて」



