あたしがはっきりそう伝えると、小暮くんは悔しそうに顔を歪ませた。

彼女をとっかえひっかえしている女好きな斎藤くん。

遊んでる、軽い、チャラい。

噂はたくさん出回ってるけど、でもそれだけが斎藤くんのすべてじゃない。

優しいところもあるんだよ、人のことをよく見てるんだよ、よく知りもしないあたしの味方をしてくれた。

なにを考えてるかわからない人だけど、悪い人じゃない。それだけは、自信を持って言える。

だからあたしは斎藤くんを好きになったんだ。

「ってことだから、もういいだろ? 男なら潔く身を引け。じゃあな」

斎藤くんの低く真剣な声が耳に響いた。

すぐさま腕を引っ張られ、その場から離れて行く。

その力があまりにも強引で、あたしは駆け足になりながら必死に追う。

小暮くんは追いかけてくることなく、そんなあたしたちを見て言葉を発することもなかった。

連れて来られたのは中庭で、斎藤くんはようやく足を止めた。

「なんか、ごめん」

「え?」

「叶ちゃん、困ってるように見えたから思わず声かけたんだ」