思わず口をパクパクさせていると、斎藤くんはあたしの隣に並んで目の前の小暮くんを見た。

「小暮、だっけ? 悪いけど、諦めて?」

え……?

──ドキン

『悪いけど、諦めて?』

「え、いや、僕は、その、真剣です……! 斎藤先輩にそんなこと言われたくありません」

「でも、叶ちゃんは俺のだから。悪いな」

斎藤くんがあたしの肩に手を回して引き寄せた。

突然の出来事に、斎藤くんのことしか目に入らない。

信じられなくて戸惑ってしまい、自分でもわかるくらい顔が真っ赤だ。

熱い……熱すぎるよ。

だって、こんな……こんなこと。

「あ、青野先輩……本当ですか? 本当に斎藤先輩なんかと……」

小暮くんの目が心配そうに揺れている。

『斎藤先輩なんか』

そこには動揺している様子も見てとれた。

似合わない、そう言いたいんだと思う。