後輩たちに笑顔を返す斎藤くんは、どんな人にも愛想がよくて優しい。話しやすいから後輩からもモテるんだよね……。
女の子に囲まれる斎藤くんに胸がチクリと痛む。
当然だけど斎藤くんは体育館から覗き見してるあたしには気づいていない。
はぁ、帰ろう。もともとちょっと見たらすぐに帰るつもりだったんだ。
あの子たちのことなんて、気にしない。
あたしはそっと踵を返し、昇降口の方へと向かった。
昇降口に着くと、あたしのクラスの下駄箱にもたれかかるようにして見知らぬ男子が立っていた。
チラッと男子の顔を見上げる。
すると目が合ってしまった。クラス章の色からして一年生の男子だ。ちょっと幼くて少年のような風貌。かわいらしい顔をしている。
「あの、青野先輩ですよね?」
「え? は、はい、そうですけど」
いきなり声をかけられてビックリした。
「僕、一年の小暮(こぐれ)っていいます。突然すみません」
小さくペコリと頭を下げられ、驚いてしまった。
「本当に突然なんですけど、ぼ、僕、入学式の代表挨拶をしてた青野先輩に一目惚れしちゃって……す、好きなんです!」