ああ、またやってしまった。
どうして聞き流すことができないんだろう。
「え? 誰?」
「なに?」
あたしを振り返ってジロジロ見つめてくる派手な後輩たち。
「っていうか、なんなんですか?」
「ダメッて言われる筋合いないんですけど」
「ほんと、そういうのうざーい」
彼女たちは挑戦的な態度で突っかかってくる。
あたしは思わず拳をきつく握りしめた。
「そんないい加減な気持ちで告白なんかしないで」
相手に対して失礼だよ。こっちは本気なんだからね。それに斎藤くんだって、そんないい加減な気持ちで告白されてもうれしくないはず。
「なに? 説教?」
「あなたには関係なくないですか?」
「ほんとビックリするー」
高らかな笑い声をあげて後輩たちは笑った。
なんなんだ、この子たちは。ビックリするのはこっちだよ。試しに告白して付き合えたらラッキーって……ゲームじゃないんだから。
斎藤くんをなんだと思ってるの。
──ピーッ
試合終了のホイッスルが鳴った。
なんとなくこの場はそれきりになって、選手たちがぞろぞろとコートの外へとやってくる。
「マジで意味わかんない。行こ行こ!」
「だねー! 斎藤せんぱーい!」
後輩たちが走って行くのを、ただ見つめるあたし。女の子たちが一斉に取り囲んで、斎藤くんは一瞬で埋もれてしまった。
あたしは体育館の入口で佇んだまま、女の子の中心で飲み物を飲む彼を見つめる。