男の子らしいゴツゴツとした手に、甘い笑顔。

す、すごく緊張するよ。

女友達も少ないあたしは、男友達なんて皆無。こうして挨拶を交わすことさえ、手が震えて緊張してしまう。

それが……好きな人ならなおさら。

「そういやさぁ、俺ら今日日直だったよな? やだなー、だりーな。あ、虎、市口さんも! おはよ」

彼の名前は斎藤小次郎(さいとう こじろう)くん。

バスケ部の男子で、明るいお調子者の斎藤くんは、クラスのムードメーカーだ。

バスケがうまくておまけに背が高く、それでいてかなりのイケメン。

一見爽やかな斎藤くんだけど、誰にでも甘い笑顔を振りまいて色気がたっぷりで。

誰にでも平等に優しくて、こんなあたしにも笑顔で挨拶してくれる斎藤くんは、学校中の女の子からすごくモテる。

「コジロー、おまえ、俺が同じクラスにいなくて寂しいだろー?」

「はぁ? なに言ってんだよ。それは虎だろ?」

「ははは、バレたか」

末永くんと斎藤くんは同じバスケ部で、二人は親友と言っても過言ではないくらい仲が良い。

楽しそうにじゃれ合いながら笑っている姿に、周囲の女の子たちが羨望の眼差しを向けている。

モテるのは斎藤くんだけではなく、末永くんも同じだ。

「叶ちゃん、行こっ!」

思わず斎藤くんに見惚れていると、咲彩に腕を引っ張られた。

「もう、叶ちゃんってば斎藤くんのこと見すぎだからー」

「う、だって、カッコいいんだもん……」

「…………」

呆れ顔を浮かべる咲彩が、斎藤くんのことをよく思っていないのはわかってる。