やっぱりすごいよ、斎藤くんは。見習わなきゃって思うことがたくさんある。
授業が始まり、あっという間にお昼休みになった。お弁当袋を抱えて、あたしは一人屋上へ向かう。
──ガチャ
「ま、まぶし」
五月の快晴の空を見上げて、いつものようにフェンスを背にして地面に座る。そして膝の上でお弁当を広げた。
モグモグと卵焼きを頬張りながら、何気なくスマホを取り出し画面を開く。
すると、メッセージの通知がきていた。
『今どこ?』
──ボトッ
ビックリしすぎて卵焼きを地面に落としてしまった。
ど、どうして斎藤くんが……!
『お、屋上だよ……!』
ドキドキしながら震える指先で文字を打つ。
──ピコン
「わ!」
すぐに返事がきて、今度はお弁当箱を落としそうになった。
『わかった!』
え?
ん?
わかった!って……。
いったい、どういう……。
いろいろ思考を巡らせていると、屋上のドアが重たくギィィィと開いた。
そこから姿を現した人物に、信じられない気持ちでいっぱいになる。
「よ!」
「な、なんで……」
「一緒に昼飯食おうぜ!」
斎藤くんはあたしの隣に座って、購買で買ってきたパンと飲み物をその場に広げる。
呆然とそれを見つめていると、笑われてしまった。
「そんなに見られたら、恥ずいんだけど」
「え、あ……! ご、ごめん!」
「はは、うん。あー、腹減ったー。いただきまーす」
美味しそうにパンを頬張る斎藤くん。
子どもみたいな無邪気な笑顔が、たまらなくカッコいい。
「食わないの?」
「え、あ」
「このパンうまいよ。一口食う?」
「い、いいよ! あたし、食欲がなくて」
「どっか具合いでも悪い?」
「う、ううん! そんなんじゃないよ」
隣に斎藤くんがいることが信じられなくて、ただ胸がいっぱいなだけ。
一人ぼっちのあたしに突っ込んでなにも聞いてこないし、こうして一緒にいてくれる。
なんだかすごく、居心地がいい。



