「うん？」
首を傾げる斎藤くんの前で手のひらを広げてみせる。
な、名前呼びなんて、どうやったらそんな流れになるの？
「どうしたんだよ、急に黙って」
「え、いや、あの、普通に恥ずかしいんだよ……」
だってこんなの慣れてないもん。
斎藤くんの目にあたしが映っている。それだけでもすごく奇跡的なことなのに、こんなに幸せでいいのかなって。
「さ、斎藤くんは斎藤くんなので、あたしは斎藤くんと呼び、ます。斎藤くんは好きに呼んでね」
「ぷっ、斎藤くん言い過ぎな。わかったよ、じゃあ叶ちゃんって呼ぶから。叶ちゃんも、気が向いたら俺のこと名前で呼んで」
そんなの絶対に無理。恥ずかしくて呼べるわけない。こうやって隣にいられるだけでも、意識しすぎてどうにかなりそうなのに。
「おーい、コジロー！ ちょっとこっち加勢してー。荒木の奴、アイテムばっか使って全然倒せねーんだよ」
「はぁ？ 俺はおまえらみたいにロールプレイングゲームなんかしてる暇ねーんだよ」
「なんだとー？ 頼むよ、なぁ」
「やーだね」
自由奔放、斎藤くんにはこの言葉がピッタリだ。人の意見に流されることなく、自分をしっかり持っていて、臆することなく自分の意見をズバズバ言える。
