数人の男子たちが行ってしまうと、取り残されたあたしたち三人。
「おはよ、青野さん。それと伊藤、だっけ?」
「うん、伊藤です。おはよう、斎藤くん」
「ああ、はよ」
恥ずかしくて、斎藤くんの顔が見られない。その存在を意識するだけでどうにかなってしまいそう。
伊藤くんとなら普通に話せるのに、斎藤くんを前にすると緊張しちゃう。
それでもなんとか挨拶だけは返さなければと思って、あたしは囁くように声を絞り出した。
「お、おはよ」
「はは、うん」
「……っ」
顔を覗きこまれて目を見開く。斎藤くんは朝からテンションが高くて、清々しい笑顔を浮かべている。
キメの細かいつやつやのお肌に、キリッとした眉毛。力強い意志を秘めたまん丸の瞳。
なぜか斎藤くんはあたしの隣に並んで歩き出した。斎藤くんはすんなりと溶け込み、あたしを置いての伊藤くんとの会話が始まる。
「伊藤ってサッカー部だったんだな」
「うん、まぁね。斎藤くんはバスケ部だよな?」
「よく知ってんね」
「斎藤くんは有名だからね」
「はは、俺ってば人気者だから」
「うん、そうだよね。すごいよ、斎藤くんは」
「いやいや、今のは突っ込むところだろ。俺、ハズい奴じゃん。な、青野さん」
「え?」
いきなり振られてビックリする。



