翌朝、電車通学のあたしは通勤ラッシュの時間帯にもみくちゃにされながら電車に揺られて学校へと向かう。

でも今日はなんだか緊張してしまって、学校の最寄り駅に着くと激しい動悸がしてきた。

斎藤くんに会える。

そう考えただけでドキドキしておかしくなりそう。

どんな顔をすればいいのかな。なんて、学校に着くまでの間そんなことばかりが頭の中をぐるぐる回っていた。

昇降口に着くと、そんなにゆっくり歩いていたつもりもないのに部活の朝練終わりの生徒たちが一斉に来て走って行く。

その中にサッカー部に混じって走ってくる伊藤くんの姿を見つけた。

「おはよう、伊藤くん」

バタバタとやってきた伊藤くんは、あたしを見てニッコリ微笑む。伊藤くんの額には汗が浮かんでいた。

トレードマークのメガネも今はしていない。

伊藤くんって意外と背が高いんだ。よく見ると筋肉質な腕をしていて、血管が浮き出ている。

ゆるい雰囲気だったから今まで気づかなかったけど、案外男の子なんだなと思ってみたり。

「おはよ、青野さん。っていうか、今日めちゃくちゃ暑くない?」

「だね。あたしも歩いて来ただけで背中に汗かいちゃった。伊藤くんって、サッカー部だったんだね」

「あ、うん。そうなんだよ。レギュラーになれなかったから、あんまり自慢ではないけどね」