そういうの、みんなに知られたくない人だったのかな。

思えば、斎藤くんが自分のことを話してるのってあんまり聞いたことがないなぁ……。

『うん、わかった!』

たったこれだけ返信するのに打ち直しては消し打ち直しては消し、そうこうしている間に一時間も経っていた。

ドギマギしながらその画面とずっとにらめっこしていた。

既読はすぐについたけど、それ以降返信はない。


あたしの返信、シンプル過ぎたかな?

もう少しかわいげのある内容を送るべきだった?

顔文字とかつけるべきだった?

話題を膨らませるべきだった?

でも、すぐに終わらせたかったのかもしれないし……。

末永くんはともかく、斎藤くんって無意味なメッセージのやり取りは面倒だと思うタイプっぽい。

だから返信がないんだよね?

いやいや、そもそもあたしの返信って返事がいらないようなものだし。

そりゃちょっとはなにか返ってくるかもって期待がないわけじゃないけど、なかったらないでべつにそれでいい。

いや、ダメなのか?

どうすればいいんだろう。

なにが正解なんだろう。

今まで誰とも付き合ったことがないから、付き合うって具体的になにをすればいいのかわからない。

メッセージひとつにこんなに悩むなんて、あたしがおかしいのかな。

──ピコン

『じゃそゆことでよろしく(∩_∩)おやすみ』

「え? もう寝るの?」

早くない?

まだ十九時半だよ?

寝るのなら邪魔しちゃいけないと思って、返信はしなかった。

そっか、斎藤くんっていつもこんなに寝るのが早いんだ。

メッセージひとつで斎藤くんのことを知れるなんて、なんだかうれしいな。