ごめんね……咲彩。

「ほんとかなー?」

「ほんとほんと! あ、そういえば、こないだ小テストあったでしょ? どうだった?」

話題を切り替えたくてさり気なく振ってみた。すると咲彩の顔から笑みが消えて、深刻なものになっていく。

「最悪でした……」

「え、あ、そっか」

「叶ちゃんは?」

「あ、はは」

「どうせいつもみたく満点だったんでしょ?」

「…………」

「あたしに気を遣ってくれなくていいんだからね。叶ちゃんが頭いいのは知ってるし、さすがって感じ! やっぱり大学に行くんだよね?」

「うん……一応、大学には行くかな。親が国立の有名大出身だから、同じところに行けって言われてる。咲彩は?」

急に深刻な話になり、浮いた感覚からどこか現実味を帯び始める。

「あたしはまだ決めかねてる。あ、もちろん大学には行くつもりだけどね。でも、なにがしたいって明確なものがあるわけじゃないんだ」

「難しいよね、あたしも、これといってなにかやりたいことがあるわけじゃないし」

「ただなんとなくで大学に通うのも嫌だし、気の持ちようっていうのかな。やりたいことが決まってるほうが身が引き締まる気がするよね」