斎藤くんに彼女宣言されたのはついさっき、今日のお昼休みのこと。あれからドキドキしすぎて午後からの授業はまったく手につかなかった。
あたしが斎藤くんの彼女だなんて、まるで夢でも見ているみたい。
試しに頬をつねってみたけど、ヒリヒリして痛かった。夢じゃない、夢じゃないんだ。これは現実なんだ。
意識しすぎて隣の席の斎藤くんをチラチラ見てしまっていた。あまり勉強が得意じゃない斎藤くんのちょっと気だるげな横顔。
時にはあくびなんかもして、授業を聞いているのかいないのか。
斎藤くんは友達とスマホでメッセージのやり取りをしたり、ゲームをしてたり、ものすごくいつも通りだった。
でも一つだけ、いつもとはちがったことが。斎藤くんはあたしの視線に気づくとこっちを向いて、優しく笑ってくれた。
その笑顔にドキドキして、ああ、ずっと見ていたいなんて、そんなふうに思ってしまったの。
あたしだけがこんなに意識してるのかな。
だって、仕方ない。
初彼氏なんだよ。
それに、ずっと……好きだったんだ。意識しないわけがない。
「斎藤くんとなにかあったでしょ?」
「えっ?」
──ギクリ
鋭い咲彩の突っ込みに冷や汗がたらりと背中を伝った。
「なに言ってるの、あるわけないでしょ」
咲彩はきっと、あたしと斎藤くんが付き合ってるって知ったら心配するだろう。
だからなんとなく言えなくて、まるで悪いことをしているかのようにギクリと心臓が飛び跳ねた。
「えー、怪しいなぁ」
「な、ないない」
そう言いながら後ろめたさが増してくる。