斎藤くんにそんな顔をさせたいわけじゃない。男友達といる時のように、明るく笑っていてほしい。
「き、昨日の告白の返事、聞いてもいいかな?」
こうなったらきっぱり振られる覚悟を持たなきゃ。
大丈夫、あたしは大丈夫。
「あー……うん。実はまだすげービックリしてる。だってまさか、青野さんが俺のことを好きだなんて、想像もしてなかったし」
「…………」
そう、だよね。ビックリするよね。
仲良くもないのに、好きとか言っちゃって。
戸惑うような表情を浮かべる斎藤くんは、あたしと目が合うとぎこちなく笑ってくれた。
「でもさ、うれしかったよ」
「え?」
うれし、かった……?
「…………」
その言葉が信じられなくて、あたしの心臓はもう破裂寸前。
期待半分、不安も半分。
妖艶に微笑む斎藤くんの顔は究極にカッコよくて、見る者すべてを魅了する。
一瞬で惹きつけられて、目が離せなくなった。
やっぱり、好きだよ……。
簡単に諦められそうにない。
「だからさ──」
期待しちゃダメ。斎藤くんはあたしを振ろうとしてる。それなのに……。
「今日から俺の彼女ってことで」
「え……?」
い、今、なんて?
あたしの聞き間違いかな。
ううん、そうじゃない。あたしははっきり自分の耳で聞いた。
『今日から俺の彼女ってことで』
ウソ、でしょ?
あたしが斎藤くんの彼女だなんて。
今までずっと夢見てきた現実。
「ほ、ほんとに、あたしでいいの?」
「ダメなの? 俺は青野さんがいいよ」
うっ、真顔でそれはダメだよ。
殺人級のその甘い笑顔にもクラクラする。
ドキドキしすぎて心拍数がやばい。あたし、このまま幸せ過ぎて死ぬんじゃないかな。
ああ、好きだな。もうどうなってもいいや。
斎藤くんがあたしを選んでくれるなら、一緒にいられるなら手段なんて選ばない。