「もう知らないっ!」

フンッと顔を背けると、女の子はプリプリしながら空き教室を出て行った。一瞬の出来事をよくわからないまま見送ったあと、すぐに訪れる沈黙。

なんだか妙にそわそわして落ち着かない。

付き合いたいとも思わないって、斎藤くんにとってドンピシャなタイプだと思ったのに意外だった。

でもそれよりも、斎藤くんが『青野さんはそんな子じゃない』って言ってくれたことがめちゃくちゃうれしい。

「あ、あの、なんだか、ごめんね……」

「なんで謝んの?」

「えっと、邪魔しちゃったし……それと、助けてくれてありがとう」

「べつに邪魔だなんて思ってないよ。それに、青野さんが来てくれてうれしかった」

「なっ」

う、うれしいって……あたしのセリフだよ、それは。

「だから、お礼を言うのは俺のほう。サンキューな」

「そ、そんなっ!」

「なんて言って断ろうか考えてたんだ。正直、青野さんが飛び出して来てくれて助かった」

「……っ」

うう、恥ずかしい。考えてみたら、めちゃくちゃ大胆なことをしちゃったよね。

自分がしたことを冷静に思い返すと真っ赤になってしまい、その顔を見られたくなくて小さくうつむく。

「き、昨日は言い逃げして帰っちゃってごめんね……」

「あー……うん、めちゃくちゃビックリしたけど」

うっ、だ、だよね……。

斎藤くんは困ったようにクスリと笑った。きっと昨日みたいにそんな顔をしているんだと思う。

あたしったら、あたしったらー!!