「澄ました顔しちゃってさ、人のこと見下してるよね、絶対に」
「そ、そんなこと……」
うまく顔に出せなくて、言葉でも伝えるのが苦手で、あたしはいつもそんなふうに誤解されてしまう。
言い返すことができずに押し黙った。
「おいおい、やめろよ」
スッとあたしの前に立った斎藤くんは、あたしを守るように手を広げて、女の子の前に立った。その背中はなんだか怒っているように見える。
「青野さんはそんな子じゃないし、俺は人の人格を否定するような子を彼女にしたいとも思わない」
え……?
あたしは斎藤くんの言葉が信じられなくて、固まってしまった。
なにを、言ってるの?
頭の中が真っ白になって、状況がうまく飲み込めない。
「だから申し訳ないけど、きみとは付き合えない」
「なっ、なんで?」
「なんでってさっきも言ったけど、もう一回聞きたい?」
「う、く。コジローくんって、見る目ないよね!」
「なんとでも言えば?」
なにが起こっているんだろう。
斎藤くんが女の子を振っている……?
「ふんっ、勝手にすれば? コジローくんレベルの男なんて、そのへんにたくさんいるんだからっ! 声かけたのだって、誰とでも簡単に付き合ってくれるって聞いたからだよ」
振られたのがよっぽど悔しかったのか、顔を真っ赤にして怒っている女の子。
癒し系どころか、これはあれだ。男子の前だと態度が変わる典型的なぶりっ子タイプ。正直、あたしの一番苦手なタイプだ。



