『憶測だけで人を疑うのはやめろよ』


俺が思わずそう言ったのは、疑われて泣きそうになっているきみの姿に気づいたから。


細く弱々しく肩を震わせながらスカートの上でキツく握りしめた拳、泣くのを我慢して下唇を噛んでいる悔しそうな横顔。


それを見て、この子がそんなことするわけないって──。


そう思ったら、居ても立ってもいられなくて、守ってあげたいっていう保護欲がわいたんだ。


「そ、そうだったんだ、知らなかった……!」

初めて聞かされる俺の本音に、ポーッとしながら頬を真っ赤に染める叶ちゃん。

俺は叶ちゃんのこの顔にとても弱い。

かわいくて、愛しくて、温かくて、優しい。

そんな色んな感情にさせられる。

「俺、叶ちゃんと肩を並べられるくらいカッコいい男になるから」

「えっ、十分カッコいいよ、斎藤くんはっ!」

「いやいや、俺なんてまだまだだよ」

もっともっと、強くたくましくなりたい。

そしたらさ──。

叶ちゃんはもっともっと、俺のことを好きになってくれるかな?

「も、もう十分好きだよ?」

「まだまだだよ、足りない」

「……っ」

「もっと俺を、好きになれ」

そう言うと、叶ちゃんの顔がさらに真っ赤になった。


それを見てクスッと笑う。


こんな日々が、ずっと永遠に続いていけばいい。


心の中で、ふとそんなことを思った。











2019.08.30

《もっと俺を、好きになれ。》

完結