「あ、ホント? ごめんねっ。斎藤くんにだけ渡すのは失礼かなって思って」

「まぁ叶ちゃんらしいといえばそうだけど、叶ちゃんが作ったものを他の奴に食べさせたくないっていう微妙な男心もわかってほしい」

「あはは、なにそれっ」

「叶ちゃーん、俺、わりと本気で言ってんだけど……」

「そうなの? ごめんね。たくさん作ってきたから、みんなにもぜひ!」

「わかってるって〜、たださ、俺の気持ちもわかってよ」

ムゥッと唇を突き出す斎藤くんに、ますます笑ってしまった。

だって、なんだかすごくかわいいんだもん。

「笑うな」

後ろからコツンと頭を小突かれる。その手はガシガシとあたしの頭を撫でて、それはとても優しい手つきだった。

「このあと、どっか寄って帰ろう。校門で待ってて」

うれしくてつい頬がほころぶ。

付き合ってからというもの、斎藤くんからのお誘いや連絡がすごく多くなった。

もともとマメなタイプじゃないみたいだから、あたしのために無理してるんだったら申し訳ないなって思ったりもしたけど。

『俺が送りたくて送ってるんだから、いーの』だって。

気持ちが通じ合ってることが実感できて、すごくうれしい。