ちがうのかな?

「あたしの場合は虎ちゃんだけだよ〜!」

「あ、そうなんだ?」

そういえば、差し入れを持ってくる女の子たちってお目当ての男子にしか渡していないかも。

全員分、なんなら足りないといけないから、それ以上に余分に持ってきた。

「斎藤くんが不機嫌にならなきゃいいね」

咲彩がクスッと笑って、ギャラリーから一階へと下りていく。

斎藤くんが不機嫌になるって……どうして?

意味深発言に首を傾げながら、あたしも帰り支度をして席を立つ。

コートの中では選手たちが握手と礼を交わして、解散したところだった。

勝利したことがうれしくて、うちの学校サイドは明るいムードが漂っている。

あたしはそんな中斎藤くんに走り寄って、ゼリーが入ったバッグごと手渡した。

「え?」

「差し入れだから、みんなで食べて?」

斎藤くんは一瞬だけ戸惑うような表情を浮かべたけど、すぐに子どもみたいな無邪気な笑顔を見せる。

「サンキュー、うれしい。みんな喜ぶと思う。でも──」

首から下げたタオルで汗を拭きながら、斎藤くんは小さくはにかむ。でもすぐに、ちょっとムッとしたような顔。

「俺にだけだと思ってた」