「きゃあ、コジローくーん!!」
「行けー、がんばれー!」
──ダンダンダンダン
体育館の中に響く黄色い歓声と、ボールをドリブルする重低音。
バスケットコートの中で、誰よりも目立って動いているのは大好きな斎藤くん。
キラキラとした汗がまぶしくて、斎藤くんの真剣な表情に釘づけ。さっきから他の人なんて目に入らないほど、ボールを持っていない時でも斎藤くんから目が離せない。
「叶ちゃん、めちゃくちゃ見つめすぎ〜! かわいい」
ここは体育館の二階にあるギャラリー。夏休みに入って、斎藤くんのバスケの試合の応援にきているあたしたち。
なぜだか他校生の姿もたくさんあって、斎藤くんに声援を送っている。
モテるのはやっぱりちょっと複雑だけど、斎藤くんがあたしを見てくれていることがわかるから、今すごく幸せ。
「あの適当なチャラ男だった斎藤くんがね〜、まさか叶ちゃん大好きになるなんてなぁ」
「ふふ」
「ま、何はともあれ叶ちゃんが幸せそうでよかったよ」
「ありがとう、咲彩」
「いいっていいって! それより、どこまで進展したのー?」
隣をチラ見すると、なにやらからかうような咲彩の瞳と目が合う。