「ははは、市口さん、こえー」

「笑うところじゃないでしょ! 真面目に言ってるんだからね!」

「わかってる、わかってます。泣かせません、約束します」

「言いかたが気に入らない。叶ちゃん、ホントにいいの? 斎藤くん以外に、もっといい人が……」

「市口さん、それ以上言うとさすがの俺も傷つきますから」

「え、なに? なんか発言が真面目っぽい。そんなキャラじゃないのに。どうしちゃったの?」

「真面目に誠実に生きるって決めたんで」

「な、なにそれ、胡散臭い……。叶ちゃん、ホントに」

「大丈夫だよ。あたし、どうしてもやっぱり斎藤くんがいいの。好きなの。だから……応援してくれないかな?」

「「か、叶ちゃん……」」

俺と市口さんの声がかぶった。

なんてかわいいことを言うんだ。

「そりゃあ、もちろん応援するよ。するに決まってるじゃん! なにかあったら、絶対あたしに相談してねっ!」

最後まで疑うような目で見られたが、市口さんはどうやら納得してくれたみたいだった。

虎はのんきに「俺の彼女がお節介でごめん」なんて言って、楽しそうに笑ってる。

「夏休みに入ったらダブルデートしようね」

「咲彩、ありがとう。だ、ダブルデート……! したい!」

「行き先考えないとね〜! あ、海とかどう? かわいいビキニ一緒に着ようよ!」

「う、海……?」

は?

ビキニ?

「ダメ」

そんな姿、他の男に見せたくない。それを想像するだけで心の底から沸々と怒りがこみ上げる。

「夏休みは俺らの最後の試合の応援にきてよ」

「それはもちろんだよ! なにか差し入れ作って行くね」