次の日、いつもよりもそわそわした気持ちで学校へと走った。
──ミーンミンミンミンミン
清々しいほどの晴天の中、どこかから蝉の鳴き声が聞こえる。
足取りがこんなにも弾んでいる俺は、本当に単純で扱いやすい奴だ。
昇降口に着くと、ローファーから上履きに履き替えている叶ちゃんの姿を見つけた。
「よっ」
「きゃあ」
ポンと肩を叩くと、小さな悲鳴がもれた。
よっぽどビックリしたのか、叶ちゃんがすごい勢いで振り返る。
今日はシュシュでハーフアップにしてる叶ちゃん。結わえられた上半分の髪が、ピョンとはねてて超かわいい。
「さ、斎藤くん、おは、おはよう!」
「はは、なにそんなにどもってんの」
「だ、だって、緊張しちゃって」
はは、かわいい……。
「やっべ、青野さんだ」
「かっわいー!」
「マジヤバいよな。神だわ」
「はは、ダメ元で告ってみれば?」
叶ちゃんは周りのヤロー共から、またしてもたくさんの視線を集めている。
「ダメに決まってんだろ」
イラッとして、俺は叶ちゃんの肩に手を回して引き寄せた。
フワッと香るフルーティーなシャンプーの匂い。細くて華奢な肩を抱いていると、その匂いにやられそうになる。