「諦めぐせがついちゃってたんだよな。そっからはもう、叶ちゃんも知ってる通り、高校生になった俺は彼女をとっかえひっかえ。

どうせ離れていくんだ。女なんて信じない。そう思ってたら、実際に最後にはどの女も俺から離れてった。

ほら、やっぱりなって。でもまぁ、仕方ないかって。情けないことにその繰り返しで、そんな付き合いかたしかできなかった」

そういう、ことだったんだ……。

斎藤くんは苦しんできたのかもしれない。

後悔してるって顔に書いてある。

「でも、叶ちゃんに出会って、純粋さとか無垢さとか、ピュアさとか一生懸命さが新鮮で、かわいいなって。ストレートに心に響くんだよな、叶ちゃんの言葉って。一緒にいて居心地いいし、落ち着くし。不思議なことに、叶ちゃんが俺を裏切る姿が想像できなかったというか……ま、気持ちを素直に伝えてくれてたからっていうのもあるけど。

でも、俺は都合が悪いことは笑ってごまかして、うまくかわして逃げてきた。

叶ちゃんのこと、傷つけてるってわかってても、笑うことしかできなかったんだ。

すげーカッコ悪いなって思ったよ……」

「斎藤、くん……」

「真央のことだって……俺は自分の気持ちと向き合うことから逃げて、伝えることもせず、自分からあっさり手放して。いかにも冷静に見せてた。そのせいで、真央が傷ついていたとも知らないで」

「…………」

「逃げずにちゃんと本音をさらけ出して話し合うべきだったんだよな。そしたら、ちがう道があったかもしれない。相手が考えてることは、結局は本人じゃないとわからないんだよ。そんな当たり前のことに、当時の俺は気づけなかった。自分が傷つかないように、必死だったんだ……」