不安と緊張から顔を上げられず、さらには返事さえできずにいると、斎藤くんは友達に呼ばれてどこかへ行ってしまった。

なんだか、めちゃくちゃ普通だったような。

まるで昨日のあたしの告白なんてなかったかのようだった。

あそこまで言っちゃったし、てっきり斎藤くんも気まずいだろうなって思ってたけど。

ちがったの……?

もしかして……告白され慣れてるから、あんな告白はいつものことだとか?

あ、ありえる、斎藤くんだもん。

あたしの告白なんて、大したことはなかったんだ。だから、気にも留めてない。そう考えたら納得がいく。

なぁんだと落胆する気持ちと、ショックな気持ちが入り混じる。振られることさえなく、あたしの告白はなかったことになったということなのかな。

でもせめて、ちゃんと振られたかった。そしたらきっぱり諦めもつく。

告白するつもりじゃなかったにせよ、このままじゃ納得がいかない。

ちゃんと返事を聞こう。

そう決意したはずなのに、話しかけるタイミングが見つからない。隣の席だからチャンスもあるかと思ったけど、斎藤くんは休み時間のたびに席を立って教室の後ろへと行ってしまう。

「あ、おい、斎藤!」