あたしは斎藤くんの背中に腕を回して、ギュッとギューッと抱きついた。
混ざり合う二つの鼓動が、すごく心地よくて照れくさい。
「カッコ悪い斎藤くんも、余裕のない斎藤くんも、全部、ぜーんぶ大好きだよっ……!」
ありったけの想いをこめて、斎藤くんの身体を抱きしめる。
「やべ……叶ちゃん、ちょっと離れて……」
「や、やだっ」
離れようとする斎藤くんをこれでもかってほどキツく抱きしめる。
「か、叶ちゃん……っ、くるし」
さすが男子なだけあって、あたしの腕じゃ足りないけれど、この気持ちが全部届きますようにって、精いっぱいの想いをこめた。
「す、好き……あたし、斎藤くんが、ものすごく」
「う、うん……わかった、わかったから」
切羽詰まったような声を出す斎藤くんの顔を見上げる。
ゆでダコみたいに真っ赤になっている斎藤くんの整った顔があった。
「う、ウソ、真っ赤……」
「そりゃ、真っ赤にもなるだろ。それだけ好き好き言われたら……」
なぜだかムッとしているような声。だけど甘い響きを帯びていて、反対にあたしも恥ずかしくなってくる。
「叶ちゃんって、意外と大胆だな」
「だ、大胆……!?」
「思いっきり抱きついて、好きって……」
「あ、あたし、斎藤くんが真央ちゃんのところにいっちゃうんじゃないかって……ずっとずっと、不安だったの。だから、今、すごくうれしくて。全部伝えたくて、抱きしめたくなったの」
「え、真央? なんで……? え? どういうこと?」
「ごめん、斎藤くん、あたし真央ちゃんに会ったことがあるんだ」
「会った? なんで?」
困惑気味の斎藤くんに、あたしは前にナンパ男から助けた女の子が真央ちゃんだったことを伝えた。
「真央ちゃん、いい子だし、かわいいし。まだ未練があって、ヨリが戻っちゃうんじゃないかって……不安だった。でも、安心したよ……っ」
胸の奥にあったわだかまりやモヤモヤがスーッときれいに消えてなくなった。



