「俺、ずっと物わかりのいい余裕のある男のフリしてた……だって、カッコ悪いとこ見せたくないし。笑ってごまかして、逃げてばっかでごめん……」
「……っ」
「叶ちゃん相手だとカッコ悪いとこ見せまくりで……全然余裕ねーし、みっともないし、情けないしで。なぜか余裕がなくなるんだよ、カッコつけようと思っても、カッコつけらんねーの」
あふれだす斎藤くんの本音は、あたしの胸を究極に甘く刺激する。
「逃げてばっかでごめん……いっぱい傷つけてごめん……」
そんなふうに思ってたなんて、知らなかったよ。
「でもさ……すっげー好きだから……っ」
甘すぎるほど甘い言葉をくれるきみに、あたしの心臓は破裂しそうだよ。
「……っ」
「卒アルの元彼の話だって、そっけないフリして聞いてたけど。内心めちゃくちゃムカついて、気になった。でも、聞いたらカッコ悪いよなとか……頭で色々考えてさ。って、あー! なに暴露してんだ、俺はっ……!」
余裕のなさそうな斎藤くん。見上げたその顔は、真っ赤だった。
熱のこもったその瞳。あたしを見つめる優しい眼差しに、身体の芯が溶けてしまいそうな感覚になる。
あー、もうダメだ。



