こらえきれなくなった涙の粒が頬に流れた。

「今まで斎藤くんの気持ちを知ることから逃げてきたけど、逃げてばっかりじゃ、ホントにほしいものは手に入らないって気づいたから……っ」

あたしが一番ほしいのは──。

斎藤くん、きみの気持ちです。

「別れ話なんかじゃないよ。あたしは……斎藤くんの気持ちが、知りたいのっ。今日はそれを聞こうと思ってたんだよ。だから……聞かせてよっ」

泣いて困らせるつもりじゃないのに、涙が止まらない。必死にそれを隠そうとして、あたしは斎藤くんの胸に顔を埋めた。

「やっべ……もう、我慢できねー……」

え?

「ごめん、叶ちゃん……」

「……っ」

──ギュッ

さらにきつく抱きしめられる身体。

気が動転して、この状況が理解できない。

ごめんって……?

「俺、今、ホッとしてる」

静かで落ち着いた声が、あたしの中にスーッと入ってきた。

「別れ話じゃなかったことに、今めちゃくちゃホッとしてる……」

──ドキドキ

これは、あたしの心臓の音?

それとも……。

「俺、叶ちゃんのことが好きだよ」

「……っ」

う、ウソ。

一瞬、好きってなんだっけ?って頭をよぎって、フリーズしかけた。

ずっと聞きたかった言葉。ほしかった斎藤くんからの好きの言葉。

「うっ……っ」

ダメだ、うれしすぎて涙が止まらないよ。