心臓が限界を超えるほどにドキドキして、身体中が熱くなる。
いったい、どうなってるの。まともに思考が働かなくて、赤くなる一方で、このままだと斎藤くんの熱で溶けてしまいそう。
「さ、さい、とう、くん?」
あたしの頭に顔を埋めて、下を向いている斎藤くん。色っぽいピンク色の唇が近くにあって、ドキドキと鼓動が速まる。
「俺、今まで物わかりのいい男のフリをしてきたけど……でも、無理だ。もう限界」
「え……?」
な、なにが……?
「叶ちゃんに振られるかもって考えたら、今日一日なにも手につかなくて、授業中もぼんやりしてた……今まで振られることがわかっても、こんな気持ちになったことなんてなかったのに」
え?
思わず耳を疑ってしまうような言葉たち。言われていることはわかる。でも、解析が追いつかない。
「離れたくないって、そんなふうに思ったのは初めてなんだ」
ねぇ、ウソでしょ?
「伊藤なんかには、やらない。つーか、他の誰にも渡してたまるか」
歯の浮くようなそんなセリフ。
夢でも見てるみたいだよ……。
「さ、斎藤くんは……あたしのこと、どう思ってる……?」
「どうって……そんなの」
ずっとたしかめるのが怖かった。
斎藤くんに好きって言わせるほどのものがあたしにはなくて、どうやったら好きになってもらえるのかがわからなかったから。
斎藤くんはいつも余裕たっぷりで、ホントのことは一切言ってくれなくて、いつもいつもいつも、大事なことは交わしてばっかりで。
「ここまで言えば……言わなくても、わかるだろ?」
斎藤くんの声は途切れ途切れで、だけど、ものすごく色っぽくて。
限界を越えてドキドキしてるのに、それ以上にドキドキする。
「わかんないよ……! ちゃんと斎藤くんの口から聞きたい……」
泣くつもりなんてないのに、ダメだ。
昨日から涙腺がゆるみっぱなし。



