「放課後にゆっくり話すよ」

「…………」

考えこむようにして黙りこんでしまった斎藤くんは、しばらくしてから「わかった」と小さくつぶやいた。

考えていても仕方がない、ちゃんと向き合うって決めたんだもん。覚悟しなきゃね。

隣の席に斎藤くんがいるせいか、授業中もそわそわしてして落ち着かない。

伊藤くんと何度か目が合って、そのたびに告白された時のことを思い出してしまい、顔が熱くなった。

今日一日、気づくとあっという間で、放課後が近づいてくるたびに、どうやって切り出そう、ちゃんと言えるかなって、不安が増してくる。

いざ本人を目の前にしたら、緊張してなにも言えないかもしれない。

だけど、このままでいるのも耐えられない。

ぶつかって砕けたら、咲彩に泣きつこう。

昨日、そうやって覚悟を決めたんだ。

「じゃあ、次の問題を斎藤ー、前に出てやってみろ」

今日最後の数学の授業中、斎藤くんが当てられた。

斎藤くんは数学が苦手ならしく、当てられたら絶対に嫌な顔をしたり、ブツブツ言ったりするんだけれど──。

あれ、でも、どうしたんだろう、無反応だ。

「おーい、斎藤。聞こえてるか? 目ぇ開けたまま寝てるのか?」

「コジローくんなら、ありえまーす!」

「だな」

「はぁ、まったく」

先生が呆れたようにため息まじりの声を出した。

「おい、青野、斎藤を現実世界に連れ戻してやれ」