「青野さん、おはよう」
「お、おはよ、伊藤くん」
「今日は早いんだね」
「うん、まぁ」
ニッコリ笑う癒し系の伊藤くんを見て、なんだか少し心が和んだ。斎藤くん以外だと、こんなにも落ち着いていられる。
ああ、会いたいような、会いたくないような、複雑な気持ち。
「あ、コジローくんだぁ。おはよう!」
「うん、はよー」
──ドキン
ギクリといったほうが正しいかもしれない。名前を聞いて、あたしの身体はピキッとまるで石像のように固まった。
──ドクドク
ドキドキを通り越して変に高鳴る鼓動。尋常じゃないくらいの汗が浮かんで、意識が全部斎藤くんに集中する。
「青野さん、どうかしたの?」
「え……あ、いや、なにも」
そんなあたしを不思議そうに伊藤くんが覗き込む。
「そう? 顔色悪いけど?」
「あ、はは、ちょっと寝不足なんだよね」
後ろから斎藤くんが近づいて来るのが気配でわかる。色んなクラスメイトから声をかけられ、どんどん声が近くなってきた。
「おはよ」
あたしに言ったんじゃないよ、きっと。その証拠に伊藤くんが「おはよう」と返事をしている。
「青野さんも、はよ」
「え……」
「昨日、日誌はちゃんと提出して帰ったから」



