いつもの朝だけど、なんとなくちがう。今日の天気予報で梅雨が明けたと言っていたから、そのせいかな。
一気に気温が上がり、本格的な夏がやってきた。
澄んだ空に蝉の鳴き声。あと一週間もすれば、夏休みがやってくる。
待ってましたと言わんばかりのギラギラとした太陽が、肌を照りつける。
暑いけど、夏は嫌いじゃない。
甘酸っぱい青春の匂いがして、あたしは空を仰いだ。
「はよ」
昇降口で上履きに履き替えていると、背後から聞こえる低い声に思わずドキッとした。
どうしたってこの声だけは、ありえないほど意識してしまう。
振り返るとそこには、走ってきたのか息を切らす斎藤くんの姿。
「おはよう」
「あっちー……走ってきたから、汗が尋常じゃねぇ……」
斎藤くんはゆるんだネクタイとカッターシャツの隙間をパタパタさせて、風を送っている。
半袖のカッターシャツからはたくましい腕が出ていて、さらにドキドキした。
いつもの斎藤くんだ、いつもの。
「さ、斎藤くん」
「ん?」
目が合うといつものようにニッコリ笑ってくれる。
斎藤くんのこの笑顔が好きだった。
「斎藤くん、今日の放課後、時間ある?」
「え?」
「話したいことが、あるの……」
「話したいことって……?」
マジマジと見つめられて、思わずそらしてしまいたくなる。
でも、ダメ。