さっきの伊藤くんの言葉が、頭の中で何度も何度も繰り返される。

まだ夢でも見ているみたいだよ。

「顔、赤いけど?」

ふと隣から視線を感じて横を向くと、斎藤くんが頬杖をつきながらこっちを見ていた。

「なんかあったの?」

探るような視線。

「え、いや、あの、なにも」

心を見透かすような眼差しに、たじたじになる。

「ふぅん、なんかあるって顔してるけどな」

それは、こっちのセリフだよ……。

この前どうして真央ちゃんと一緒にいたの?

聞きたいのに、聞けない……。

斎藤くんがなにを考えてるか全然わからなくて、本心が見えなさすぎて……怖い。

「今日、俺んちで一緒に勉強しない?」

「え?」

「もうすぐテストだしさ」

「ごめん……今日はちょっと」

とてもじゃないけど、斎藤くんの前で笑える自信がない。

あたし、そこまで強くないよ。

斎藤くんの気持ちがどこにあるかわからなくて、不安なの。

「そっか……じゃあ、仕方ないな」

なんでそんなに寂しそうな顔で笑うの。

そんな顔されたら、あたしが悪いみたいじゃん。