「どうぞ、遠慮なく」
「ごめんね、すぐ返すから。ありがとう!」
かしてくれたお金とともに、五十円玉を三枚自販機に投入する。
あたしは迷わずミネラルウォーターを買うと、待っていてくれた伊藤くんと一緒に並んで歩き出した。
「あのさ」
唐突に伊藤くんに話しかけられて、しかもそれが妙にかしこまったような声だったから、疑問に思って首をかしげる。
「どうしたの?」
「うん、えと。なんかあった?」
反射的に隣を見れば、伊藤くんは気まずそうに頬をかいていて。
視線を宙にさまよわせたあと、まっすぐにあたしの目を見つめてきた。
「今日の青野さんは目が腫れてるし、その、最近ずっと元気がないような気がしてさ」
図星を突かれたことに、返す言葉が見つからない。
「最近無理して笑ってるように見えたから、ずっと心配してたんだ」
「…………」
伊藤くんは優しい穏やかな口調で、ものすごく心配してくれているのがわかる。
「斎藤くんと、なんかあった……?」
「えっ……!?」
しまった、あからさまに反応しちゃった。
驚きのあまり伊藤くんの顔を見つめてしまっていると「やっぱり」と言って、伊藤くんは確信を得たかのようにフッと笑ってみせた。



