その日はいつもよりかなり早めに家を出て、電車に乗って学校へ向かった。教室に着くとまだ誰も登校していなくて、とりあえずホッとする。

斎藤くんが来るのはバスケ部の朝練が終わってからなので、いつもかなりギリギリだ。

とりあえず自分の席に着いて気持ちを落ち着かせる。大きく息を吸って吐いて、吸って吐いて。

繰り返しているうちに、不思議とだんだん落ち着いてきた。

そのうちに次々とクラスメイトがやってきて、仲のいい者同士が輪になっておしゃべりを始める。

話題はとてもささいなこと。

昨日のドラマがどうだったとか、好きなアイドルのことや、恋バナなんかもちらほら。

大人数より少数でいるほうが好きなあたしは、みんなで騒ぐこともなく、遠くからワイワイしている場所を見守っているような静かなタイプ。

そのせいで大人っぽくて落ち着いている、なにをやっても淡々としている、感情がつかみにくくて、なにを考えてるかよくわからないって言われてしまう。

そんなあたしだけど、意外と情に熱いし、恋愛ドラマや映画を観て泣くことだってある。顔には出ないかもしれないけど、みんなが楽しそうだとあたしもうれしい。

言葉足らずで誤解されてしまうことも多く、仲良しと呼べる友達はクラスにはまだいない。だからいつもひとりぼっちだ。