繁華街の中のカラオケへとやってきた。学校帰りのこの時間帯は、たくさんの高校生で賑わっている。
カラオケで受付を済ませると、部屋番号が書いてある札を受け取り、指定された部屋へ。
あたしだけ……。
好きなのも、苦しいのも、切ないのも、泣きそうなのも、なにもかも、あたしだけ。
そう、だよね……。
だって最初から……斎藤くんは、あたしのことなんて好きじゃなかった……。
『あたしのこと、ホントはどう思ってる?』
一番聞きたかったのは、知りたかったのは、斎藤くんの気持ちだ。
斎藤くんの気持ちがわからないから、こんなにぐちゃぐちゃで、苦しいんだ……。
いつかあたしから離れていくんじゃないかって、ちょっとのことで不安になる。
付き合ってるのに一方通行のこの想い。
片想いしてた時よりも、ツラいよ……。
「あ、ほら、次! 叶ちゃんの番だよ」
「うん……!」
マイクを手にして大きなモニター画面を眺める。どうしてこんな選曲をしちゃったんだろう。
女の子が片想いする相手に振られたという今流行りの失恋ソング。
歌っているうちに自分と重なって苦しくなった。
喉の奥が熱くなって、うまく息が吸えない。
「……っく」
涙があふれて視界がにじむ。それ以上歌えなくなったところで、頬に涙が流れた。