真央が指定したカフェは、全国にチェーン展開している誰もが知ってる有名な店だった。

ガラス張りになった窓際の席に座っている真央を外から見つけ、トントンとガラスを叩くと、向こうも俺に気づきぎこちなく笑ってみせた。

不思議なことに、緊張や不安はない。なんでかわからないが、落ち着いている。

何人かの列に並んでアイスコーヒーを買ったあと、真央の向かい側に腰を下ろした。

「ご、ごめんね、ここまで来てもらっちゃって」

「いや、いいよ」

そう言いながら、アイスコーヒーをひとくち飲む。

正直こういう店にはあまりこないし、コーヒーだってほとんど飲んだことがない。

というよりも、コーヒー自体苦手だ。それなら甘いもののほうが好きだし、なんなら、フラペチーノとか頼んでみたかった。

でも、今日はやめておいた。

アイスコーヒーにしたのは、ちょっとだけカッコつけたかったからなのかもしれない。

「なんか飲み物いる? なんなら、買ってくるけど」

真央の飲み物は空っぽで、先に自分のだけ買ってしまったけど、そうだよな、長時間ここにいたんだもんな。

「え、いいよ。飲みすぎてお腹チャポチャポだから。それに、緊張で喉を通りそうにないし」