話していると苦しくなる。

初恋相手とうまくやってるんだろ?

だったら、俺に電話なんかしてくるなよ。

そんな気持ちが無意識に声に現れてしまっていた。

「うん、あのね、どうしても一度会って話がしたいの。ダメ、かな?」

「…………」

「お願い、一度だけでいいから」

「……わかった」

「ほ、ホント? よかった〜、ありがとう。いつがいいかな? あたし、明日はちょっとダメなんだけど」

「今家にいんの?」

「え、ううん、外だよ。塾の帰り」

「どこ? 今からそっち行くから」

「ホント? 駅前のカフェなんだけど」

詳しい場所を聞き出すと、俺は電話を切って私服に着替えて家を出た。

チャリを漕ぎながら、よくわからない感情が胸にわき起こっていることに気づく。

なんなんだ、これは。

会いたいような、会いたくないような。

未練があるとか、そんなんじゃない。

久しぶりに真央に再会した時ほどの、衝撃や戸惑いともちがう。

駅前は夜になってもチカチカとしたネオンがきらびやかに輝いていて、騒がしい。

チャリをチャリ置き場にとめて、駅の反対側へ移動するべく階段を駆け上がる。